そんな中、彼の病状は悪化していった。

けど、裕美の前ではずっと気丈に振る舞い続けた。

だから裕美は気づけなかったんだ…。

圭の両親は、裕美と出逢い、楽しそうに笑う息子のキラキラした笑顔に、このままずっと時が止まれば良いのにと思ったほど。

毎日楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

二人が付き合って無事1年を迎えた。

けど…ホントは圭はもう少ししか生きられないことを知っている。

だから、エイプリルフールの今日、小さな嘘をつくことにした。

いつものように中庭でデートをしていた二人。

ベンチに並んで腰掛ける。

「ねぇ、裕美ちゃん…あのね…」と圭の明るく繕った声が裕美の鼓膜に心地良く響く。

「なーに?」と優しく裕美は聞く。

「僕ね、裕美ちゃんのこと大好き!だからこれからもずっと一緒にいよ?もうすぐ退院出来るんだ!」って。

そんなの真っ赤な嘘なのに…

最後かもしれない、裕美の笑顔を目に焼き付けておきたかった。

「ほんと?やったぁ!嬉しい!」そう言って笑う裕美は心から嬉しそうにしていた。

圭は、心で誤った『裕美ちゃん、嘘ついてごめんね、けど…今日だけは許してね。だって今日はエイプリルフールだから』って。

そして二人は唇を重ねた。

それから2、3日は楽しく過ごした。

退院したら色んなとこ行って色んなことして…そう言い合いながら。