「久遠くん…?」



「そんな可愛い格好して、無邪気に寝転ぶなんて、本当にありえないから。」




心配しすぎだよ、って言い返したかったけど、あまりに真剣な顔で言われるから、押し黙る。




正直そんなこと気にしてくれるの、久遠くんだけだと思う…。




そんなことを思いながら動けずにいると、聴き慣れたケータイのアラームが鳴った。




「あっ、後半のシフト…、始まるから、行かなきゃ。」




ポケットからスマホを取り出しながら、起き上がると久遠くんは微笑んだ。




「…うん、いってらっしゃい。」




「ごめんね、全然他に行けなくて。…久遠くんはクラス戻るの?」



「…気が向いたらね?」



絶対気が向かないやつだそれ!



なんか本当に隣のクラスが心配になってくる…。




そう思いながらも、私が笑うとまた口を尖らせた。




「…とりあえず、ここ静かだから、もうちょっと頭冷やしてからどこか行くよ。」



「そっか、じゃあ私、行くね。ありがとうっ、一緒に回ってくれて。」




私の感謝に柔らかく微笑んだのを見た後、体育準備室を出る。




「……なに、あれ。なにあれ!!」




その瞬間、速すぎる心臓の音と顔の赤さを誤魔化すように全力で走った。




独り言なんて誰にも聞き取れないくらい、もうそれはそれは全力で!