「久遠くん、女子に追われ、んっ!」
「追われてるの?」って言おうとしたのに、久遠くんの右手が私の口元を覆って、遮られる。
動揺する私なんてお構いなしに、「こっち来て」とグイッと引っ張られた。
有無を言わさない感じ!?わかってましたけど久遠くんってたまに強引ですよね!
引っ張り込まれたのは、ピアノの近くにある教卓の中。
久遠くんが先に入ったのを無理やり入れ込まれるから、向き合って抱き合ってるみたいになる。
え、ち、近い…!近い!全力で近い!
ま、待って、久遠くんの吐息が、耳にかかりそう…!
「く、久遠くん…」
せめてものSOSを出そうと名前を呼んだら、背中に回されていた腕がギュッと力を込める。
そのまま自然と、久遠くんの肩に顔を埋める形になった。
「しーっ。」
ひええええええ!耳!耳にダイレクトに声が!
ちょっと待って、心臓がもたないっていうか絶対に聞こえるでしょ、これ!
むり!助けて!誰か!

