僕が初めて彼女を見たのはある夕日の綺麗な日だった。風が強くて、図書室の窓の外の桜が風の中を舞っていた。図書室に入った僕は、本を読んでいる彼女を見つけた。すごく綺麗だった。夕日の光が彼女を包み込んでいる。まるで世界に僕と彼女しかいないんじゃないかと錯覚してしまいそうだった。
「涼香ー?部活始まるよー?」
と言う声で静寂が破られる。
そうか、彼女は涼香さんっていうのか、と一人納得していると、
「あ、ごめん。今行くー」
と彼女が席から立ち上がる。
僕は彼女たちが帰ったあとも動けずにいた。
ただ、僕の横を通っていたときに香った彼女の柔らかい匂いだけがいつまでも残っていた。