「おい、お前、大丈夫か。」

情けなくぐずぐずと鼻を啜ってる時に唐突に聞こえてきた声。

パッと顔を上げると不機嫌そうな雰囲気を漂わせてる顔の整った男の人が目の前にいた。
さっきの大和撫子さんよろしく、目の色は透き通るように綺麗な赤色だ。

「……えっ、あ、はい大丈夫…です」

まさか話しかけられるとは思ってなかったせいか、返事はしどろもどろになり
どう考えたって大丈夫じゃないのに大丈夫だと言ってしまう。

「そうか、大丈夫なら俺はもう行くから。じゃ。」

そう言うと顔の整った男性は__仮に名前をイケメンとしよう。

イケメンは手を振りどこかに立ち去ろうとする。

…嘘やろ。せっかくの助けの手が!!

この世界でのセカンドコンタクト、無駄にする訳には行かない…!

「ちょっと待ってちょっと待って!!どう見たって大丈夫じゃないよ!素直に信じないでよ!なんで帰ろうとするの!?絆創膏とかちょうだいよ痛いよこの傷どうにかしてよ〜!!!」

_我ながら凄い駄々のこね方だ…元の姿でやってたらドン引きものだ。


「…声掛けなきゃ良かったな」

「元の姿じゃなくてもドン引かれてる!?」

「あーーすまんすまん取り敢えず絆創膏やるからあとは自分でどうにかしてくれ。」

そう言うとイケメンはそっぽを向きながら絆創膏を渡してくる。

「あ、ありがとうございます。って、ああ待って待って!まだ行かないで!」

「…まだなんかあるのか?」

絆創膏を渡して立ち去ろうとするイケメンを再び呼び止める。

私が助けて欲しかったのは怪我だけでは無い。

慣れない土地で1人で目的地まで行くのはかなり不安だ。

今の私、“リン”の家まで案内してくれないかお願いしてみよう。

「あの…実はあそこに見える大きな家まで行きたいんですけど、よく道が分からなくて…良ければ案内して…くれませんか?」

「なんだ迷子か…めんどくさいな…」

あ!今この人めんどくさいって言った!
小声だけどバッチリ聞こえた!!
もうちょっと優しくしてくれても良くない!?

私がジト目で見つめているとイケメンは慌てた様子で口を開いた。

「あぁ違う違う、俺今人探してて忙しいんだよ。まぁ面倒なのは本当だけど。結構急ぎのやつで、さっさとその人のこと見つけないと困るんだ。」

「面倒なのは本当なのかよ…って、その人も迷子なんですか?」

「迷子?あれは迷子というのか…?いやまぁ、迷子って言ったらそうか…」

「じゃあ!私もその人探すの手伝います!手伝うので、その人見つかったら私をあの家まで案内してください!」

「えぇ、いや、でもなぁ…」

あまりやりたくないが、こうなったら…!

「お願いします!帰れなくて困ってるんです!」

私はイケメンの目をじっと見つめ可愛く懇願してみた。

さっきまであまり目を合わせないようにしてたから、改めて見つめるとやっぱりだいぶ顔が整っている。

モデル雑誌とかに混ざってても遜色ないだろう。

いや~それにしても今の私の見た目可愛くってよかった~
これでちょっとは考えを変えてくれるはず…

でも本当に忙しかったら申し訳ないし、これで断られたら大人しく引こう…

そう思った次の瞬間だった。