穴に落ちて…落ちて、落ちていくうちに気を失って…

気付いたら横断歩道の信号の横に突っ立っていて…

…今に至る。


いや、思い出せたのはいいけど……
意味わかんねえ……


「って、も、もしかして、お母さんが言ってた時間遡行できる都市伝説ってこれのこと!?!?」

出発する前にお母さんが言っていた都市伝説。


詳しい内容は忘れたけど、旅館の近くに時間遡行の都市伝説があるとか言ってたっけ…


「まさか本当だったとはああ〜〜〜〜……」


流れてきた記憶の嵐と、今起きてる事象の正体に耐えきれなくなり、思わず頭を抱える。


_海香、心配してるだろなぁ…

海香の制止を振り切って来てしまったのだ。もしかしたら怒ってるかもしれない。

しかし今の問題は次の行動をどうするかだ。

ここが何年なのか聞くのは達成した。

それに付随するように新たな謎もぽんぽん出てきたけど…

「取り敢えず…大和撫子さんに聞いた私の家…行ってみようかな?」

私とことを親しげにリンちゃんと呼んでくれた大和撫子さん。

結局本名は分からずじまいだったけど、凄く優しい人だったし情報も当てになるだろう。

「三丁目の大きな家…見た感じ近そうなんだけどバス使うとか言ってたっけ…?」

もしかしたらバスに乗った方がすぐに辿り着けるのかもしれないけど、ここの地理もろくに知らないでバスに乗ったりしたら余計迷子になるかもしれない。

「よしっ、歩こう!」

いつまでもここで頭抱えて悶々としてる訳にもいかないし、時間管理機関とか、私以外の人の赤い目とか、色々と謎も多いけど、犬も歩けばなんとやらだ!

行動を起こせば何か変わるかもしれない!

新たな目標が出てきて俄然やる気が出てきた。

_ちょっと走ってみようかな?


迸る気持ちの赴くままにクラウチングスタートの姿勢を取り、公園の出口の方向を真っ直ぐ見据える。

そして私は思いっきり力を入れて最初の一歩踏み出した。


その結果………


「……!?ヘブッッッ!!!!」


………コケた。


それはそれは盛大に。

あっと思う間もなく地面に滑って倒れていた。


「〜〜〜〜っ!!いっっっったーーーい!!!!」


というか、普通に考えて今の私の体は私のも
のじゃないし、そもそも身長さえかなり差が
あるのだからいきなり身の丈に合わない力の
入れ方して思いっきり走ろうとしたら、転ん
でしまうのは少し考えれば分かる事だった。


「これ、どうしよ… 」

思いっきり擦りむいてしまった膝小僧はそれなりに出血している。

ズキズキとした痛みと出鼻をくじかれたのも相まって心身共にダメージは絶大。


行き交う通行人も目線をこちらにやる人はいるものの、誰も私に手を差し伸べようとはしなかった。


「せっかく頑張ろって思ったのに…踏んだり蹴ったりだな…」


知らないところに自分独り。

今まで考えないようにしてた孤独感が急に襲ってきて思わず涙が滲んだ。