「終業式の時の校長先生の話しって、なんであんな長いんだろ。」

「本当だね〜。真央眠りかけてたね。」

そう言ったのは、中学の頃からずっと1番の親友である宮崎美穂だ。

美穂はあわてんぼうの真央とは違っておっとりした雰囲気で小柄だが、口調はハキハキとしている時がある。

「俺なんて校長の話の時なんか夢の中へ行ってたぜー。」

そう言ってきたのは、大山悠斗である。彼とも中学の頃から友達である。

「別に自慢して言うことじゃないから。」

「みほは終業式の今日まで冷たいな〜。明日からは会えなくなるぞ?」

「大山は別にいいもんねー。真央は遊ぼうね〜。」

「何だよそれー、俺も誘えー!」

「2人ってなんか恋人みたいだね。」
「「は?!」」

「ほら息ピッタリ〜」

「真央、冗談でもそういうこと言うのやめてよ〜。大山とかありえないから!」

「ありえないって何だよー。へこむだろぉー。」


「真央」

みほたちと話していた時、遠くで呼ぶ声がした。

「あっ、青兄。」

「青先輩!こんにちはッス!」

「おお大山かー。あっ真央、俺用があるから今日一緒に帰れない。」

「そっか、分かった。」

「1人で大丈夫か?」

「うん。でも今日は私の誕生日だから早く帰って来てよね!」

「おう。じゃあまた後でな。」


「青先輩ほんとカッコいい〜〜。いいなぁ、あんな人がお兄ちゃんだなんて。」

「確かに。青先輩は男の俺でも惚れるわ。」

「血は繋がってないけどね。」

そう、真央と青は本当の兄妹ではなく、いとこ同士である。

真央の両親は、小さい頃から出張で海外に飛び回って多忙なため、青の家でずっと過ごしている。

特に血が繋がってなくても、青は小さい頃から真央の側に居て、大切に思ってくれていた。


「そういえば、この前も青先輩告白されたってウワサだぜ。」

「そうなの?」
「真央知らないの?青先輩すごくモテるんだよ?うちのクラスにも青先輩狙ってる人いるし。」

「そうだったんだー。青兄そんなこと何にも言ってくれないから。」

「青先輩イケメンだし、頭も良いし、スポーツ万能だからなー。そして優しいんだわ。ほんと最高かよ!同じ部活の先輩として、もう惚れる惚れる。」

「えっ大山もサッカーだったの?」
「えっみほ今頃かよ!?」

「だって大山は中学の時は水泳してたじゃん。」
「まあな。でも…うーん、そうだな。まっ、高校生だし?モテる部活といえばサッカーかなーって。」

「どうせ青先輩に影響されたんでしょ。」
「鋭いなぁみほ。まっ、それだけ青先輩は俺にとって憧れなんだよ。

話しこそしないが、青がモテることは真央も知っていた。

そのせいかよく青の連絡先を教えてほしいと頼まれたり、差し入れを渡すように言われたりすることも多々あった。

しかし、青は一向に恋人を作らない。

前に、『どうして恋人を作らないの?』と聞くと、『そんなのいらない。』と言っていた。

そのため、みほと大山と別れた後の家までの帰り道、青兄に恋人が出来たらどんな気持ちになるだろうと考えながら歩いていた。

朝降りた坂を歩いて上り、田んぼ道を歩いていると、雪が降ってきた。

「わ…雪だ。」


この自然豊かな場所でパラパラと降る雪は、とても静かで美しく、雪が好きな真央はすっかり夢中で空を見上げていた。