「ちょ…青兄飛ばしすぎ!」

「ハハハ、ちゃんと捕まっとけ!」


冬の冷たい風を受けながら、坂を下り、自転車は大きく右に曲がる。

真央と青の通う高校まで、初めはバス停までは自転車で行き、そこからはバスに揺られながら15分程度で学校に着く。

しかし、田舎であるがゆえバスの本数は少なく一車線なため、
毎分ごとのバスはいつも満員であり予定より遅れるのがいつものことである。

だから真央はいつも青の自転車に乗せてもらって学校に通っている。

時間こそかかるが、田舎ゆえに近道や車もめったに通らない田んぼにはさまれた道などを行くと、自転車でも同じく15分ぐらいで着く。

だから真央はいつも青の自転車の後ろに乗せてもらって通っていた。


「ああ校長先生の話長いだろうなぁ。」
「平均30分ぐらいだからな。」

終業式の話をしながら、坂の勢いで増す自転車のスピードに身をゆだね、右へと曲がろうとした。


____すると、ふいに人影が見えたため、青は急ブレーキをかける。

キキーーーーーーーッ!!!



「…???」


真央がその人影がはっきり人間だとわかった時、
まるで時が止まりつつあるような、視界がとてもゆっくり動いているように感じた。

それは、
深く被っていたフードから、目を見ることもできるほど。


その人物と目があった瞬間、真央は息が止まるかと思うほど、吸い込まれそうになった。

一瞬だったが、それは深く焼きついた。