「ん……」

(あれ…ここどこ?)

真央はあれから爆睡してしまったようだ。

(なんかいいにおい……あったかい。)

そしてそのまま再び目を閉じようとした時、
乗っていたバスが、勢いよく急ブレーキをして止まったため、真央は前の椅子の背中に頭をぶつけた。

「痛ッ!」

完全に目を覚ました真央は、体勢を整えるやいなや、左隣に誰かが座っているのき気づき、そちらに目をやった。



そこには、真っ直ぐ真央を見つめる少年がいた。
真央は、ぶつけた頭を押さえながら視線を少年から前に向けると、驚いた。

バスにはほとんど人がいない。

まして、制服を着ている人は真央と少年以外いないかった。

ピンポーン!!!!
真央は慌ててバスのボタンを押した。

そして真央がバスを降りると同時に少年も降りた。

学校前のバス停からどれぐらい進んだのだろう。

日頃バスを使わない真央にとって、寝過ごして降りたこの地は全く知らない場所だった。

「……ここどこ?」
キョロキョロと見回し、小さく呟いた真央の横では、少年も辺りを見回している。

新学期早々、遅刻であることを確信した真央は少し情けない気持ちになった。

しかし、少年が同じ東高の校章バッジをつけていることが分かった瞬間、怒りがこみ上げてきた。

「何で起こしてくれなかったの?」

半ば八つ当たりのようにして言った真央に、少年は真央の方をじっとみるが、何も答えない。

「東高だよね?何年生?」

「………2年。」

「ねぇ知らないの??月の初めに遅刻したら、放課後残って反省文書かなきゃいけないってこと!」

興奮気味に言う真央だったが、少年何も答えない。

「……はぁ。」
真央はため息をつき、居残りを覚悟した。

「ホラ早く行くよ!どうせバスは1時間後にしか来ないんだから、タクシー割り勘!」

そう言って真央が歩き出すと、後ろから少年も続いて歩きだした。

(変な人………。)



真央と少年。
これが、運命の出会いの始まりであった。