少女『カイ、朝』


もう一度、扉をノックすると布団の膨らみが動き一人の男が起き上がってきた。


男『…ん……』


肩にかかる髪は激しい寝癖ではね、起き上がった上半身はガッチリとした筋肉がついている。　


その筋肉にはたくさんの傷痕があり、暗い部屋でも痛々しいほどはっきりと見えた。


少女『おはよ、先に降りてる』


扉を開けたまま、階段を降り生活感のないリビングで二人分の珈琲を入れる。


苦味のあるさっぱりとした珈琲の香りがリビングに広がる。


冷蔵庫を開けると丁寧に皿に置かれたサンドイッチを取りだしテーブルに並べた。


同時に階段からゆっくりと降りてくる足音が響く。


上半身裸のカイと呼ばれた男が気だるそうにリビングに入ってきた。


カイ『はよ…』


椅子に座り、まだ湯気の上がる珈琲を飲む。


少女も向かいの席に座り、サンドイッチを口に運ぶ。


カイ『やっと帰ってこれたな』


背もたれに寄りかかりながら少女を見て呟いた。


カイ『やっぱり自分のベッドが一番熟睡中できる』


少女『いつも、ごめん…』


カイの言葉にサンドイッチを食べる手が止まり、俯いたまま少女は謝った。


それを見て、カイは溜め息をつき少女の頭を鷲掴みにして自分と視線を合わせる。


カイ『何度も言うが、謝罪の言葉なんか要らねぇよ。

それより言うことがあるだろ？』


少女の頭を掴んだまま、少女の言葉を待つ。


少し微笑んでからカイの目を見て少女は呟いた。


少女『カイ、ありがとう』


その言葉に満足したカイは、ニヤリと笑い少女の頭を乱暴に撫でる。


カイ『そうだ。

それでいい』