「先生!いい加減起きてください!」
日向は 、布団を無理矢理めくりあげた。布団をめくったあとには、眠たそうな顔をした保健医が寝ている。
「んー、今度はすずか?それともはるか?」
すずか…?
はるか……?!
「何をねぼけているんですか!ここはフローラ女学園の保健室でしかも先生は保健医でしょ!」
日向はバンバンと保健室の机を手に持っていたアンケート用紙で叩く。
「大体、保健医がなんで保健室で寝ているんですか!先生はあからさまに健康です!」
「そう怒鳴るな。寝不足なんだよ。」
ふぁ〜と大きなあくびをしながら保健医の椿修平はベッドから起き上がる。
すずか、はるかと女の人の名前を呼び。そして、寝不足!?
「やだっ!大人ってサイテー!」
日向は数歩、修平との距離を置いた。
「はぁ?」
机の上に置いてあるメガネをつけ、修平は椅子に腰かける。
「だって先生、寝言で『すずか、はるか』って」
修平はやばっとつぶやき、口元を手で押さえる。
「それより、藤岡はなんでここにいる?まだ7時過ぎだろ?」
修平は腕時計に目をやり、ふーっと前髪に息を吹きかける。
「話、そらしましたね。今度の健康診断のアンケート用紙持って来たんです。」ついさっきバンバンと机を叩いたせいか、少ししわくちゃになった紙束を手渡した。
「今週中でいいって言ったのに。早いな。」
パラパラと修平はアンケート用紙に目を配る。
「ところで、二股ですか?」
日向は率直に質問をぶつける。
「あー、これから職員室に用事があったんだ。さ、用事が済んだら帰った、帰った」
「ち、ちょっと!先生!!」
無理矢理背中を押され、日向は保健室を追い出された。
ピシャッと音をたて、ドアが冷たく閉まる。
(せっかく早く来たのに。)日向は廊下の窓から外を眺める。