ピーポーピーポー
無機質なサイレン音が、再び頭に鳴り響く。
「……アイツらの後を追え!総員、全員出動!」
「はい!!」
警官たちの声が、うっすらと聞こえる。
「おい、離せよ!じゃねえと殴るぞ!!」
捕まった男たちが警官に対抗し、パトカーに入る直前でもめている。
……ああ……終わった……
私は、そんな光景を何を思うこともなく、ただただ見つめていた。
……レイが…さらわれた……?
……私のせいで…?…レイが……?
……さら……われた…の…?
……何も、考えられなかった。
どんな声も、そんな音も、私の体をすり抜けていく。
…まるで、心にポッカリと大きな穴が開いたみたいだ。
心臓がゴッソリと誰かに抜き取られたように。
なんの感情も、体から出てこない。
私はふと、もう姿が見えない車が走っていった方向に目を向ける。
道路に飛び散ったレイの、血。
バリバリに割れたガラスの破片。
それらが、自然と目に入って来た。
それを目にした瞬間、私の目からまた大量の涙がこぼれ落ちる。
……なんて……っ
なんて…私は……っ
ーーー……無力なんだろう……っ
私はその場に、泣き崩れた。

