冷たい君の不器用な仮面









「涼那ー、今日一緒に帰ろうぜー」






ドアに手をかけた瞬間、太陽から声が掛かる。





「うん!帰ろー」







私は太陽が横に来るのを待ち、また並んで歩き出した。







なんか太陽と一緒に帰るの、久しぶりだなぁ







前まではいつも一緒に帰ってたのに、レイたちと会ってからゆっくり太陽と帰る暇なんて無かった。








だからなんだか懐かしい感じだ。







「お前最近、疲れてるよなー」







太陽がローファーを手に取りながら口を開く。







「え?そうかな。まあ確かに忙しいけど」






私も靴を履きながら、返事を返す。







……私、そんなに疲れた顔してたのかな……









確かにここ最近、レイたちのことで眠れなかったり仕事が増えたりはしてて忙しかったけど。







顔に出るほどだったとは……ちょっとショック









まあでも、太陽の勘が鋭いって言うのもあるんだけどね









太陽は私に何かあると、いつも真っ先に気づいて心配してくれる。






私が親から愛されていないことも、太陽だけは昔から知っていた。







だから余計に日頃から心配してくれているのだろう。







私はなんだか心配ばかりかけている自分が不甲斐なく感じて、うつむいた。







「…太陽ごめんね、いつも心配ばかりかけて」








私はうつむいたまま、小さく呟く。







「ん?いや、俺が勝手に心配してるだけだから良いんだよ。んなこと気にすんなー」








太陽はそんな私の背中をバシバシと力強く叩き、ニカッと笑った。







……何で太陽は、いつもこんなに優しいんだろう








明るくて、元気で。そして優しい。








私なんかの幼馴染だなんて、勿体なすぎて申し訳なくなってくる。







太陽って、やっぱり顔もいいし性格いいからモテるんだろうなー








あっ、実は好きな人とかいたりするのかなぁ。あんまり恋バナとかしないから分かんないけど…









「ねえ太陽って好きな人いるの?」








私は何気なく太陽に聞いた。







すると太陽は、えっ…とあからさまに動揺し私を見た。





……わっ、いるんだ!








「きゃー、いるんなら言ってよ!どんな人?ていうか何組?!」







私は一気にはしゃぎ、太陽の顔をのぞき込む。






すると太陽は顔を赤くしながら、顔を逸らした。






「……お前には絶対言わねー」









そう言う太陽。







「えっ、何で?!幼馴染じゃん!いいでしょ、応援するから!」







「いや、そういう問題じゃなくて」







「じゃあどういう問題?」








「……っえーと」






なになに太陽ったら、めっちゃ顔赤いよ!?









……相当その人のこと、好きなんだろうなぁ








ずっと一緒にいたのに、好きな人が出来てたなんて全く気づかなかった。








「だって俺が好きなのは……」







「ウンウン、」






太陽は顔を赤くしながらも、口を開く。







その瞬間、太陽と目が合った。









ん?と私がかしげた瞬間、







「やっぱ何でもねー!」






と言い、太陽はスタスタと玄関から出ていってしまった。








「はあ?!そこまで言っといてそれは無い!」








「〜っもういいから帰るぞ!」





「ちょっと!逃げるなー!!」








私は太陽を追いかけながら、玄関から出る。








__このとき、私は全く気がついてなかったんだ





太陽の気持ちにも









__……近くで瀬戸くんが私たちの会話を聞いていたことも……