「……柚季に心臓を提供したドナーは……奏多なの」

「……え……?」

菜々美は耐えきれなくなったのか、糸が切れたように泣きながら話始めた。

「柚季が手術をしたあの日、奏多は柚季のお見舞いに向かう途中に事故にあって……。奏多が自分の心臓を柚季にあげてって言って……死んだの」

「……う……そ……」

私の頭の中は真っ白だった。

何も考えられない。

何も考えたくなかった。

「……じゃあ私、生きてても意味ないじゃん……。助かった意味がないじゃない!!」

もう自分で止めることができなかった。

「そんなことない!!奏多だって、ずっと柚季のこと心配してた!いつもいつも柚季のことばっか……」

聞きたくない。

聞きたくない。

「死ぬ間際でさえ、奏多は柚季のことばっかり。そんな奏多の想いを柚季は踏みにじるの……?」

「でも……でも、私は奏多がいなかったら、生きてなかった。奏多がいつも私のそばにいてくれたから!私は生きていられた。……奏多がいないこの世界で、私が生きる理由なんて……どこにもない!」

急に伝えられた奏多の死。

私の心で抱え込むにはあまりにも大きすぎて。