その歌声は、音楽の知識など、これっぽっちもない私でもわかるほどの美声だった。
天使の歌声。
お母さんは天使なんだ。
それほどに美しかった。
透き通った高音ボイス。
周りからは、目に見えない景色が映し出されていた。
母の歌が作り出した楽園。
さっきまで泣いていた海光もウトウトとしている。
私もそんな歌を歌いたいと思った。
母の作り出す楽園を手に入れたいとも思った。
「…すっごいね!お母さんがこんなに歌が上手なんて知らなかった!私もその歌、歌えるようになりたい!」
「ふふ、ありがとう。じゃあ一緒に歌おうか」
「うん!」
そうして私は練習を重ねた。
ほら
夢をみて
かわいい赤ちゃん
大丈夫
明日が来るわ
おやすみなさい
そこにたどり着くまで時間はかからなかった。



