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昨日家に帰ったのは日付けが変わる直前。
家に入った瞬間、待ち構えていたかのように黒髪ショートの母親が黒い笑みを浮かべていた。
もちろん愛のムチという名の制裁をくらい、床に就いたのは午前二時半。
朝からあくびが止まらず、授業中も寝てしまう始末。
塾の授業中は寝るまいと、早めにそこに行き、俺は机の上に突っ伏して寝ていた。
そこへ陽気な広音がやってくる。
「か〜ける!昨日大丈夫やったん?」
一層重くなった瞼を無理やり開け、今にも閉じそうになる目を擦りながら答える。
「全然大丈夫ちゃうわ。死ぬほど怒られたし」
眠気に勝てない俺はケタケタと笑う広音を無視して、再び腕の中に頭を埋める。
「そういえば、名前くらい分かったんかー?」
その言葉に俺はピクリと反応し、ガバッと体を持ち上げ、広音と向かい合った。
「名前!分かってん!岸元光希歩って言うんやけどな、広音知ってるか?」
その質問に、彼は目を見開く。
「え…岸元光希歩?」
「おう」
すると思考が停止したかのように口角が上がったまま表情が固まった。
「え、なんやねん。『その子実は俺の彼女や』とかやめろよ?」
「…そのまさかやねんなあ〜」
「は!?」
「うそうそ!嘘やって!ごめんて!」
慌てて撤回する広音にさすがの俺もムカついた。
「違うから!ほんま。確かその子、不登校やった子やで」
「は?もう冗談いいから」
「いや、これマジ。多分中学、一回も来たことないんちゃうかな」
俺は黙って広音を睨む。
信じられない。
俺は知っている。
初めて光希歩を見つけた時のあの柔らかな表情。家族と話している姿。
そんな子が、不登校だなんて…。
「人違いちゃう…?」
やっぱり信じることなどできやしない。
それでも首を横に振る広音。
「翔琉に言われてから調べてんけどさ、やっぱりあのマンション、うちの中学の校区内に入ってるし、名前間違ってへん限り事実やわ」



