あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。



***


「…はい。ありがとうございました。では、向かいの控え室でお待ちください」

「はい!ありがとうございました。失礼します」

部屋を出て、スっと息を吸い、長く深く吐いた。

良かった。何も言われなかった。
オリジナルの曲は許可されていたから大丈夫と知っていたけど、脚のことを何か言われたらと思うと少し怖かったのだ。

私が控え室に入ると、また数名の視線が突き刺さる。
でもそれを、怖いなんて思わない。
私は歌手になるのだから、このくらいの視線、痛くも痒くもない、と自分に言い聞かせた。

私が席についたと同時に、審査員の代表らしき人が入ってきた。

「皆様、一次審査お疲れ様でした。これから一次審査通過の方を発表します」

生唾をゴクリと飲み込んだ。
緊張した空間。
ここにいる人たちは、倒すべき敵ではない。
同じ夢を目指し、挑戦した仲間だ。
誰が受かったって、応援できる。

スっと息を吸う音が聞こえた。

「東さん。雨宮さん。岸元さん。以上の方は一次審査通過です。おめでとうございます。面接会場への移動、お願いします」