あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

「あ…昨日は塾長が親戚の家行かなあかんみたいで、塾、九時半に閉められてん。一応ここ来たけど、一昨日光希歩、おばあちゃんの具合よくないから話せへんって言うてたやろ?昨日も忙しいんかなって思って帰ってん。…ごめんな」

…知らなかった。
気をつかってくれていたなんて。
危うく翔琉を信じられなくなるところだった。
でも。

「…でも、昨日こそ来て欲しかった」

「ごめん。なんか…あったんか」

私たちの服装を見て、多少はわかっているだろう。でもそれは、他人の口から出せるものではない。

「おばあちゃん……死んじゃったの…」

言霊とは、本当に実在するのだと思った。
口にした瞬間、耳から聞こえるその言葉は、事実だと脳が判断するんだ。
一気に視界が歪んだ。
大粒の涙が地面に落ちる感覚がした。

「またいなくなっちゃった…。また引っ越さないといけなくなった。叔父さんと暮らすの…。でも、叔父さんは私たちのこと、良く思ってなくて…」