あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。


外に出ると、喫煙スペースで白い煙を吐く叔父がいた。
海光はそれを無視してズカズカと歩いていく。
私は軽く頭を下げ、海光について行った。
人気のなさが、ある意味私を安心させる。
昨日から今日にかけて、これほど長い時間外に出たのはいつぶりだろうか。

ぽつぽつと電灯が照らす暗い夜道に女子二人。危機感はあまりなかった。でも、周りからすればそうではないのかもしれない。

「ちょっと、お姉ちゃんたち〜。こんな夜やのに危ないでー」

その声は高く、耳にしただけで女性だと思った。
振り向くと、タンクトップに上着、ロングスカートと、オシャレな人が心配そうな表情でこちらを見ていた。
肩ほどまでの黒髪で、前髪は綺麗に真ん中で割れている。耳元についた大きく輝くイヤリングが美しい。手には小さな水色の鞄があった。

ただ私は他人と会話をすることは厳しかった。
ましてやいきなり話しかけられた人となんて。