あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

***

「…知らんかった」

全てを伝え終えた頃には、既に家についており、濡れた体をタオルで拭いている時だった。

「…うん」

兄を見捨てた私を、これからもお姉ちゃんとしてみてくれるとは到底思えない。
海光に捨てられたら、私はきっと、もう生きていけない。
誰もいないこの世界で、一人、存在し続けることなどできない。

「でも、お姉ちゃんはうちのお姉ちゃんやで。うちはずっと、岸元海光として生きてきたんやから」

力強い海光の声がハッキリと聞こえた。

「こんな姉でも?」

「当たり前やん。おばあちゃんも。うちのおばあちゃんや。血が繋がってへんくても、大事な…家族…やったのに…」

弱々しい声になる海光。
私たちにとって、祖母の存在はあまりにも大きすぎて。
失った大きな存在、唯一の大人は、もう私たちを支えてはくれない。

「叔父さんのとこ、行かなあかんのやろ…?転校もしなあかんのか…」

転校。
その言葉で蘇るあの光景。

『気持ちわるっ!』
『ちょっと発音ちゃうよな』