***
「…知らんかった」
全てを伝え終えた頃には、既に家についており、濡れた体をタオルで拭いている時だった。
「…うん」
兄を見捨てた私を、これからもお姉ちゃんとしてみてくれるとは到底思えない。
海光に捨てられたら、私はきっと、もう生きていけない。
誰もいないこの世界で、一人、存在し続けることなどできない。
「でも、お姉ちゃんはうちのお姉ちゃんやで。うちはずっと、岸元海光として生きてきたんやから」
力強い海光の声がハッキリと聞こえた。
「こんな姉でも?」
「当たり前やん。おばあちゃんも。うちのおばあちゃんや。血が繋がってへんくても、大事な…家族…やったのに…」
弱々しい声になる海光。
私たちにとって、祖母の存在はあまりにも大きすぎて。
失った大きな存在、唯一の大人は、もう私たちを支えてはくれない。
「叔父さんのとこ、行かなあかんのやろ…?転校もしなあかんのか…」
転校。
その言葉で蘇るあの光景。
『気持ちわるっ!』
『ちょっと発音ちゃうよな』
「…知らんかった」
全てを伝え終えた頃には、既に家についており、濡れた体をタオルで拭いている時だった。
「…うん」
兄を見捨てた私を、これからもお姉ちゃんとしてみてくれるとは到底思えない。
海光に捨てられたら、私はきっと、もう生きていけない。
誰もいないこの世界で、一人、存在し続けることなどできない。
「でも、お姉ちゃんはうちのお姉ちゃんやで。うちはずっと、岸元海光として生きてきたんやから」
力強い海光の声がハッキリと聞こえた。
「こんな姉でも?」
「当たり前やん。おばあちゃんも。うちのおばあちゃんや。血が繋がってへんくても、大事な…家族…やったのに…」
弱々しい声になる海光。
私たちにとって、祖母の存在はあまりにも大きすぎて。
失った大きな存在、唯一の大人は、もう私たちを支えてはくれない。
「叔父さんのとこ、行かなあかんのやろ…?転校もしなあかんのか…」
転校。
その言葉で蘇るあの光景。
『気持ちわるっ!』
『ちょっと発音ちゃうよな』



