あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

***

「……嘘や」

亡骸と見なされた祖母を目の前に、海光がポツリとそう言った。
そばにいる医者も、俯いている。

「嘘や。おばあちゃん…なんでそんな急に死んじゃったん!?なぁ…おばあちゃぁぁん……」

もう言葉ひとつ発さない祖母に海光が泣きついた。
私は呆然と、その光景を見つめる。
頬につうっと生暖かい雫が通る。

もういない。
私に『生きていて』と言ってくれる人。
ご飯を食べて、生きているだけで、それだけでいいと言ってくれた人が。
また突然にいなくなった。

「なんで…どうして…」

おばあちゃんが言ったのよ?
『生きていて』と。
『もうこれ以上家族を失いたくない』と。
それは私も同じだった。
だから私は。残された人の気持ちを知っていたから。
だから生きようと思って生きていたのに。

「なんで先に死んじゃうのよ!!」

おばあちゃんだって知っていたでしょう?
残される側の辛さを。
わかっていたのに、どうして私を残して死んでしまったの?