「今日は楽しかったよ。」

「私もです。」

私達は分かれ道で、それぞれ家へ帰ろうと背中を向けると背中の方から声が聞こえた。

「そういえば君、名前なんていうのっ?」

私は彼の声に反応して振り返り、こう答えた。

「小鳥遊ひよりっ……!」

「小鳥遊ひより、じゃあ、ひよだ。よろしく!」


こんなにも自分の名前が好きだと思えた瞬間はあっただろうか。

恋は幻想だ。
そうかもしれない。

けれど、私はこの一時の瞬間を幻想だろうとそうでなかろうと、大切にしたいと思った。