「あれ、雨さんじゃないですか。」
こちらに向かって走ってきていた人は。
会社員の人ではなく、先生だった。
こんな偶然、うそみたい。
学校以外で会えると思っていなくて。
会えたことにさっきまで下がっていた気分が一気に上がる。
今日、寄り道して良かった……。
「今帰りですか?」
「はい、資料の作成で遅くなって。雨さんも?」
「友達とお茶してて。」
「ああ、いいですね。」
にっこり笑った先生は、頭の雫を払って。
カバンからハンカチを取り出してスーツを拭いていく。
私よりも濡れていた先生。
私より大きな身体を拭くにはハンカチが足りなくて。
あっという間に先生のハンカチを濡らした。
「先生、私が使った後ですけど。」
「いいんですか?」
「使って下さい。」
「ありがとうございます。」
やっぱり、白色のにしてよかった。
これが一番かわいいし。
女子アピール、できた。



