「来てくれたんだ」

しゅんは、急いで外に出てきて
あたしにそう言った。

顔色が悪い。

「門限あるだろう。歩きながら
話そう」

「うん」
繁華街から一筋外れた道は人通りが
ぐんと少なくなる。

いつものルート。
二人きりになれる道。

「ごめん。メイ」

「…」
無言になる。
歩きながら言えなかった。
別れたくない…。
そう言わなきゃ、言わなきゃと思って
いるのに…。
言えない。

しゅんも、言葉を詰まらせている。
無音の街を歩いていた。
耳を誰かに隠されたみたいに
真白。

頭も耳の中も真白。

真っ暗な夜のなか、しゅんにどう
言うと伝わるのか考えると
真白になっていく、あたし。

もう家についてしまう。
どうしよう。
その時、一番聞きたくない言葉が
真白い頭の中に入ってきた。

「本当にごめん。俺
もえことつきあってる」

THE END