「貸してくれてありがとうっと…」

教科書にメッセージを挟み、2組へ向かう。

「私も行こうか?」

朱莉がそう言ってくれたけど、

「ううん、大丈夫!
春くんと仲良くしてて!」

私は峻くんの顔が見れるだけでも嬉しいからウキウキしてた。


「あ、あの…」
「さっきの子?」

「はい、強引に借りてしまってすいませんでした。」

私は深々と頭を下げた。

「いいよいいよ!あの先生うるさいしね!」
「そうなんですよね!!」

あ。
知らぬ間に盛り上がってしまった。

私は教科書を渡すと、峻くんの顔を少し見て帰ろうとした。

「あのさ!」

だけど、九条くんに話しかけられて帰れなくなる。

「はい?」
「名前、なんて言うの?」

「あ、広瀬 ひかるです。」
「ひかるね。覚えとく」

えぇ。
いきなり呼び捨て!?
峻くんにも苗字ですら呼ばれたことないのに!

「は、はい…」



でも、知らなかった。
九条くんと話してるところを
峻くんが見てるなんて。