先生の眉毛がぴんっと上がって、すとんと元通りになるところを眺めている間、この時間がずっと続くのかと思った。続けばいいのに、かもしれない。自分で聞きに来たくせに、永遠に答えてほしくなかった。
眉毛がおりたあとの微笑みで、ぜんぶ、わかってしまったから。
「はい、本当です」
短く、はっきりと、笑って先生は言った。はじめて見る笑いかたのせいで、目の前にいるのに、どこか遠くに行ってしまったみたいに思えた。
なにも言葉が出てこない。自分が今、どんな顔をしているのかもわからない。
「四組のみんなにはもう少ししてから話す予定だったのですが、もう知られてしまったみたいですね」
うっすらと困った顔をした先生が、どこで聞いたのか、と尋ねてこないことがありがたかった。なにを聞かれてもたぶん、まともな返事ができないから。
その代わりにまっすぐに目を見て、なんとか一言だけ、体の奥底から引っ張り出すようにして伝える。この部屋に来るまでの間にさんざん練習した、これだけは。
「おめでとう、ございます」
声と一緒に、握りしめた手も震えた。笑え、笑え、笑え。がんばれわたし。愛想笑いで鍛えた表情筋、これまでの人生でいちばん、ここぞという使い時だ。ぜったいに、泣いちゃだめ。
「ありがとう、南里さん」
きりっとした眉毛が少し下がって、目がなくなるくらいにっこりと笑って、先生が告げる。涙がこぼれないように、目に焼きつけるように、その笑顔をじっと見つめた。



