甘やかして、私だけ



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~数年前~






その日は、ほとんど満開になった桜たちが青空の下

心地よく揺れていた







「いいか?同じ大学生の中でもチャラそうな男に気を付けるんだぞ?」


「えーそれってお兄ちゃんのこと?」


「ちがうし!それと、あの…時間は守って行動しなきゃだめで…」


「もーわかったから!」





本当に今日は、早口で良くしゃべるな・・・


私より緊張しているお兄ちゃんの運転で向かう場所




それは、私の新生活がスタートする場所





「本当に大丈夫なのか?あかね洗濯できたっけ?」

「できるから!!もう子供じゃないの!」



今住んでいる家より、もっともっと狭いワンルーム、そこから私の新しい人生が始まるんだって


その時は、希望とワクワクしかなかったんだ・・・






「お兄ちゃん早く帰んなよ、下まで送ってあげるから」

「えーそっけなーい」



あたりまえ。ここまでついてくるのもすぐ帰るのが約束でしょ?


背中を押して玄関まで追い出す



「私ね、卒業できたら手料理は一番にお兄ちゃんに食べてもらうの!」


「そっか…。嬉しいこと言ってくれるね、あかねは!」


わしわしと荒っぽく頭を撫でられる





共働きだった両親に代わって、幼い私にご飯を作ってくれていたのはずっとお兄ちゃんで


私が年頃で反抗的になっても、お兄ちゃんにひどいこと沢山言っても


私のご飯が作っていなかったことは一度もなかった




だから、栄養を学んで、ちゃんと自立して、


お兄ちゃんに少しでも恩返しがしたい・・・



だから、今私はここにいるんだ。






「じゃあね、私頑張るから」


車に乗ったお兄ちゃんに別れを言う

なんか、ちょっと寂しくなって来たじゃん…

すぐ帰んないからー



「あかね嫌な事あったら、すぐ帰ってきて…いいや違うな!!」

「え?なにー?」


なんか、言いかけて考え込んでるけど




「ちゃんと頑張るんだぞ、あかねなら絶対できるから!」


お兄ちゃんは満開の笑顔でそう言ってくれた



「ふふっお兄ちゃん頭に桜の花びらついてるから」

「え?どこっ?じゃなくて返事!!」


でも、私は手を伸ばして花びらを取ってあげる


「はーい。」


そして適当に返事をしておく



「おまえなぁ返事はしっかり…」

「わかったから!早く行ってよ…寂しくなるから!」


お兄ちゃんは相変わらず鈍感だね、こゆーのはサッと帰ってもらわないと帰りたくなるでしょ





そうして私は、新しい一歩を踏み出したんだ・・・