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「ねぇ、追いかけないのー?」
「・・・。」
「あかねのこと本当は好きじゃない?」
シンとする部屋に無駄に明るく響く声…
「君もなかなかやるね爽やかな見た目してさ…」
俺も君みたいになれたらなー
そんな声は、かすかな儚さを秘めている
「っ…あの顔、ずっと忘れられなくて、なのに…」
グッと握ったこぶしは震えていて
「え、そういうフェチ?ははっなんてね!」
おちゃらけていれば、無難に何事も過ぎてゆく
そんな考えを持った頃が・・・
それが、今この様子と重なる
「俺みたいになりたいって…」
「だって、俺らなんか似てない?」
この空間にいるのは似ても似つかない見た目の二人で
なのに、視線が合わさる音すら聞こえてきそうな静寂
「運命の女の子と出会うと俺みたいになれますよ…」
その空気を裂くように家を飛び出し
無我夢中で駆けた・・・
当たる夜風はほんの少し春の厳しさが残っていた
