甘やかして、私だけ


*:*:~~~



「ねぇ、追いかけないのー?」

「・・・。」

「あかねのこと本当は好きじゃない?」


シンとする部屋に無駄に明るく響く声…


「君もなかなかやるね爽やかな見た目してさ…」



俺も君みたいになれたらなー


そんな声は、かすかな儚さを秘めている



「っ…あの顔、ずっと忘れられなくて、なのに…」


グッと握ったこぶしは震えていて


「え、そういうフェチ?ははっなんてね!」


おちゃらけていれば、無難に何事も過ぎてゆく


そんな考えを持った頃が・・・


それが、今この様子と重なる


「俺みたいになりたいって…」

「だって、俺らなんか似てない?」


この空間にいるのは似ても似つかない見た目の二人で



なのに、視線が合わさる音すら聞こえてきそうな静寂





「運命の女の子と出会うと俺みたいになれますよ…」






その空気を裂くように家を飛び出し


無我夢中で駆けた・・・




当たる夜風はほんの少し春の厳しさが残っていた