甘やかして、私だけ



「あかね、まさか、まだ引きずってんの?大学のこと…」


「っ…!!」


「何回も謝ったじゃん。あかねの学費だってこと知らなかったんだって!」



急に思い出したかのように発した言葉


悪気のなさそうな言い方に


感情が溢れだしそう…



けれど、何回も自分に言い聞かせてきたじゃない



私は大人だし、我慢しなきゃ


過ぎたことは掘り返しても仕方ないんだから





「そんなじゃない・・・」

「じゃあなんで泣いてんだよ…」



「…えっ…?」

そこで、初めて頬を伝って流れているものに気づく


なんで、こんなことで泣いてんの私…


もう、ずっと前の春にこの気持ちは割り切ったはず




で、なんでこいつは笑ってんの?



「お前って、本当に、昔っから泣き虫なのに素直じゃないよな!」

「っ…あんたに、知ったようなこと言われたくないっ…‼」



うるさい。本当にうるさい。


幼い頃大好きだったお兄ちゃん

なんで、笑顔はそのままなんだろう・・・





だからこそ傷ついているのに



その笑顔で・・・お兄ちゃんの笑顔で・・・・




「あの時…‼送り出してくれたんじゃないっ…!」



溢れだす涙と一緒で衝動的に玄関に向かう



泣いてるところなんて誰にも見られたくない…!!





でも、

「待って!あかねちゃん、どこ行くの?」


将くんに引き止められるてしまった…


でも、将くんはこのことに関係ないから


今は、そっとしておいて欲しい


願いを込めてきっと出来ていない笑顔を作る


「コンビニ行って来るだけ!」


「・・・‼」


元気に言ったつもりだけど、できてない?


目を見開いて動きが止まった将くんの

手を振り払って、私は外に出る





そして、どこに行くんだろう自分



「…っ…うぅ……」


ひとりになると止められない涙


あついはずの涙は夜風で冷たくて……




私は、流れたままの涙と無我夢中で走って走って



・・・走る!!




こういう時って大体どこに向かってるかわかんないだよね


あの時もそう・・・気づいたらそのドアを開けてて


人がいるなんて知らずにね・・・