どちらかがすこし顔を動かせば、唇が触れてしまう距離…
私の心臓が痛いぐらいに鳴る
でも・・・
会社でのこと…、さっき三村くんが実際に呼んだ名前
全部、こんな時に思い出しちゃって・・・
また、モヤモヤが大きくなる
・・・もう!うじうじすんなッ!自分!!
「ね…ねぇ。」
「ん?」
すこし目線を上げた三村くんとバチリと目が合う
ひるまない、ひるまない・・・
意を決して私は、ゆっくりと口を開く
「しょ…将っ……くんって呼んじゃダメ…かな?」
よし、言えた!
千代子さん普通に名前で呼んでたし、ただ一緒に住んでる私だって下の名前で・・・
って!呼び捨てはやっぱり無理だった!!三村くん期間が長すぎた!?
そんなことより、なんか言ってよ・・・
返事を求めるように、無言でピクリともしない…将くん…の袖をギュッと掴む
「っ‼そ、そそんな!いきなりどうしたの!?最近どうしたの本当に!?」
急にのけぞりかえって雰囲気も虚しく私から手を放す、
私勇気振り絞って言ったのに!
最低・・・。
千代子さんには名前で呼ばせるのに!私はダメなの!?
こうなったら!…諦めないんだから!
今度は私から近寄って問い詰める
「千代子さんはよくって私がダメな理由を教えてよ!」
「へ?…」
ガシッと掴んだ将くんの顔が、間抜けになる
「言えないの?」
「だからっ、その、なんで千代子さっ…‼」
「呼んじゃダメ…」
呼ばなくていい…その名前…
そう思って将くんの口を人差し指で塞ぐ
「ねぇ、私のこと呼んで?」
なんか、聞きたくなった…
そっと将くんの唇から指を放す
「え…あかねちゃん?」
すこし戸惑ったあと、いつも戻り呼んでくれる将くん
そして、呼んでやる!下の名前・・・。
