甘やかして、私だけ




「あっ‼すみません…」


同じ冊子に伸ばした誰かの手と自分の手がぶつかってしまった・・・



やばい!気づかないとか私バカか!!



反射的に謝り、手を引っ込めようとすると…




”ガシッ”



「えっ…」


瞬時にその手をつかまれた・・・





「あのっ…」


そこで私が弾かれたように顔を上げると、一人の男性と視線が合わさった








目の前の彼は…

清潔にセットされた黒髪、耳元には一つピアスが光るものの
着こなされた春らしいYシャツが彼の好印象を引き立てている…




そして、私をまっすぐに見つめる眼鏡の奥にあるキリっとした目元……





何だろう…この見覚えのある感じ・・・
もしかして、どこかで会ったことあるのかな??…



ーーいやいや、ないない‼



だって、どう考えても
こんなカッコいい人が私に用なんてないでしょ!!!!






一人ぐるぐる考えている間も視線は合わさったままで・・・







_少しの間のあと、先に声を発したのは彼の方だった









「また会えたね…?」



ーー”また”???




いたずらに笑ったその優しい笑顔に私は目を見開いた





ーーだって‼目の前にいるのは……





続けて耳に届いた ”あかねちゃん”




そう名前を呼ぶ明るく弾んだ声……





ーー間違いない…‼






__そこで私は確信した