ドアの横には看板が一つ。



《珈琲の中で》



不思議な名前だ。



珈琲のいい香りが僕の鼻の中を通り抜ける。



僕は入る事にした。



ガチャッ



「いらっしゃいませ。」



珈琲の香りと透き通った声が僕にたどり着く。


僕は軽く会釈をし一番奥のカウンターに座った。



見渡してみると静かでこじんまりした店内、インテリアはアンティークな感じでこだわっているのが一目でわかった。



すごくいいところだ。



カウンター越しに1人の女性が目に入る。



さっきは後ろ姿で振り向くかたちでの対応だったから気づかなかったがかなりの美人が立っていた。



魅入っているとふと目があう。



「「、、、、、。」」



彼女は無表情のまま僕を見つめる。



僕も彼女を見つめる。



彼女は僕に一瞬のまばたきを許してはくれない。



そして彼女は呟いた。
「ご注文お決まりになりましたら、お声をかけてください。」



「えっ?、、あぁ、ありがとうございます。」



彼女は微笑んでグラスを吹き始めた。



長くて黒い髪を一つに束ねて、薄いメイク。
どこか影があってなんとも言えない雰囲気を纏っていた。