「ほら、兎衣何がいい?」
「んっとね、りんごジュース」
自販機の前で素直に欲しいジュースを答えると
流谷は突然肩を震わせて笑い出した。
な、何なんだいったい。
「ふっ…くくくくっ……ふはっ…お子様だなぁ?」
何を言い出すかと思えば
なんて失礼なやつ。
「はぁ?高校の自販機にあるんだから、高校生が買ってもおかしくないでしょ!」
「いやいやお前、知ってるか?そのジュース幼稚園のおやつの時間に配られてるんだべ?」
「うんうん、それ俺もよく飲んだわー」
晴海が横から呑気に余計なことを言う。
「晴海には聞いてない!」
「ひどい!」
せっかくりんごジュースが
飲みたい気分だったのに……
二人のせいで飲む気が失せちゃったじゃん。
「いいよ、じゃあコーヒーにするから」
「ほんとか?お前コーヒー飲めねぇんじゃなかったっけ?」
「もう飲めるようになったの!」
「そうかい。じゃあ、ほい」
「ん、ありがと」
悔しくてコーヒーを頼めば
あっさりと図星をつかれてしまう。
ほんと、
流谷にはかなう気がしない。
単に私が馬鹿なだけな
気がしなくもないけど…。
