結城理人。
彼は私の働くバイト先によくランチを食べに来た人だった。
決まった時間に、決まった場所で、いつも同じ注文していた。
最初はそれがすごく気になったのだけれど、
目を向けていくうちに結城理人さん自体が気になってしまった。

冬休みの間だけのバイトで、限られた時間の中で
結城理人さんに会うのがとても、楽しみだった。


レジでのお金を渡すときのまっすぐ見る目とか。
食べている仕草とか。食後の煙草を吸う姿とか。


あの頃の私にとっては何よりも新鮮で、
そしてあの人は私にも優しかった。


「誰にでもミスはあるから大丈夫だよ」

いつだったか、
私がレジのお金を間違えて渡してしまいそうになった時
そう言って私の失敗を許してくれたっけ。

それからだ、気になる人から
好きな人に変わったのは。