こんな、たわいも無い会話が心地いい

見た目は若いけれど
物腰は相当経験があるように見える
だから何歳なのかもよくわからない師匠

「今はお昼ですけど
稲荷さん今日大学は?」

一足先に九十九邸の縁側に
座っていたわたしにゆのみを渡す師匠

「今日も授業でしたよ
でも、こんなに満開な桜を見たら
お花見したくなっちゃって
昼コマが無いから抜けてきました」

九十九邸の庭にも立派な桜の木があり
全ての花が咲き誇っている

「綺麗ですね…」

師匠の長い睫毛がキラキラと揺れている

「師匠、妖怪も花を嗜むのですか?」

「妖怪は信じていないんじゃ
なかったのですか?」

悪戯っぽく師匠が聞く

「信じてませんよ
だから師匠の嘘を暴こうと質問してるんです」