目を丸くした師匠は
すぐにわたしのことを思い出して
ニヤリと笑った

「よく迷わないで来れましたね」

そして、例の妖怪退治やらが忙しくて大学に顔を出していないこと、そのせいで朝起きれないこと、ご飯が食べれていないことを知って

あの時介抱してくれたお礼にと朝と夕方を行ったり来たりする生活を送っている

わたしは未だに
妖怪なんていないと思っている
だから師匠の生活の財源も正体も
まだまだ謎のままだ

「そういえば稲荷さんはいつから僕を"師匠"なんて呼ぶようになったのでしたっけ」

師匠は2つに増えた湯のみにほうじ茶を淹れて言った

「覚えてませんか?
師匠が"師匠"と呼ばせてみせますなんて言ったんですよ!」

「あーそういえばそうでしたね
僕はもうボケてきたのでしょうか」

「師匠はおいくつですか?」

「何回目ですかそれ、内緒ですよ」