「師匠〜!」

春麗らかな今日
わたしはいつものように師匠の屋敷の前にいた

「ああ、開けておくのを忘れていました
どうぞ、入って下さい」

木の門が開いて麗しい顔が覗く
優しげな表情は今日も変わらない

「今日はなんだか師匠と出会った日を思い出しましたよ〜」

アンティークのテーブルに袋に入ったみたらし団子を置く

「出会った日?
ああ、稲荷さんが暑くて倒れた日ですね」

くすくすと顔を綻ばせる師匠
陽だまりのように暖かい

わたしは突然出会った美しい男性
こと、"師匠"と朝と夕方に会っている

…というか、押しかけている

出会ってからわたしは志望校を急遽
如月大学に変更して猛勉強を積んだ

そして、歴史研究科に入学
入学後全く現れない師匠にしびれを切らして
屋敷に訪問した