「手荒な真似はしたくないんですよ…」

そう言ってその人はただ動かずにじっと
わたしが手を離すのを待っていた

「ごめんなさい…ちょっとびっくりして」

手を離して少し離れて言った

「無理も無いです
僕も怪しいこと言ってごめんなさい
さ、連絡して早めにご帰宅なさって下さい
きっと親御さんも心配していますよ」

そう言ってその人は屋敷を出ようとしていた

「待って!」

あることが引っかかってわたしは引き止めた
この人が嘘をついているように見えない
それがありえないことだとしても

「妖怪って本気で居るの?」

「いますよ」

にこりと笑った、少し悲しそうに

「…わたしは居ないと思っている
でも、あなたが嘘を
ついているようには見えない
どうしてわたしの置かれた状況を
知っているのかも気になる
…それも妖怪が関係しているの?」