「なんで、帰り道がわからないってわかったんですか」

そう聞いてから後悔した
一体わたしはこんな善良な人になんてことを聞いているんだ!

その人はクスリと笑って言った

「稲荷さんが教えてくれたのですよ」

稲荷、さん?
それはわたしの名前…
…やっぱり、倒れている間に個人情報でも見られたのか!?怪しい

「どうしてわたしの名前知っているんですか」

わたしは立ち上がって戦闘体勢に入る

その人は慌てて答える

「名前?名前じゃなくて、
貴女に憑いていらっしゃる妖怪の名前ですよ!
あああ、落ち着いて!」

何が妖怪だ!綺麗な顔で人を騙そうとしているんじゃないのかこの人!

精一杯の勇気を出して掴みかかった
細い腕は思ったよりも冷たくて、そして硬かった

あれ?力が…強い!?