「あ、師匠」

「はい」

師匠は古いタイプライターを叩いていた
年季が入っていてキーが錆になっている
珍しく胡座をかいて
しかし背筋はピンと伸びている

なんとなく呼び止めたことを後悔した

次の言葉を続けないわたしに
師匠は少し手を止めてこちらを向いた

「…ん?」

優しく微笑みを浮かべている

わたしは隣の部屋で
レポートを散らかして寝転がっている

何もしていない罪悪感で
しばらく黙ってしまった

「…休憩にしましょうか」

師匠は立ち上がって首を鳴らした
さらりと黒髪が落ちる
師匠の前髪は長い
そして青みがかかっている

「…わたしは師匠ほど何もしてないです
休憩できる資格ありません」

ふふと笑って師匠は言う