「いや、魚の鯉よ」

「はぁ、鯉ですか」

「知り合いが飼い始めてね」

「そうだ琴葉さん
昼休みよかったら一緒に食べませんか?」

「いいよ
じゃあ借りてくるね」

「琴葉さん
片思いの相手から
振り向いてもらえないときは
どうすればいいと思いますか?」

柏木くんは1年次から
一緒のゼミに入っている一個上の同学年だ
どうやら長く片思いしている相手がいるらしい

「うーん、わたしは未だに
恋をしたことがないからわからないなあ」

先日師匠と食べた味噌汁で使った
油揚げの炒め物を咀嚼する

さっき借りた本を反芻する
鯉は長生きする、鯉は食べると泥臭い
鯉は…

「琴葉さんもそう思いますよね?」

「あっごめんもう一度言って」