「いろは、スマホ貸して」

「だから……」

「いいから、早く」


有無を言わさない勢いで手を伸ばしてスマホを出せという宇野くんに仕方なく従った。

バックから出したスマホを宇野くんの手の中に置く。

あ……。

宇野くんの手の上に置いたスマホには、彼から貰った青いレザーのストラップがついている。

彼もそれに気づいた様子で、ストラップを揺らしながら私の方を見た。


「まだ、こんなの付けてるんだ」


小さく笑った彼の言葉がチクンと胸に刺さる。


「宇野くんは?ストラップ外しちゃったの?」


今日は一度も宇野くんのスマホを見ていない。皆でRINEの交換をした時だって、「忘れた」って言ってたから。


「引っ越しの時にどっかにいったみたいだ」

「そっか……。でも、それでよかったのかもね。西条さんが見たらあんまり気分よくないから。今度は西条さんとお揃いのものを買って付けたらいいよ、ね」

「そう、かもな」


私も、あのストラップはずさなきゃダメなんだろうな。それならばいっそ……。


「宇野くん」

「なに?」


私のスマホを見つめながら、宇野くんは返事をしてくれる。


「そのストラップ、宇野くんが外してくれないかな……」

「え?」

「宇野くんだって嫌でしょ?私がいつまでも宇野くんとの思い出引きずってるなんて。ストラップ付けてくれたのだって、宇野くんだったしちょうどいいかなって」


自分で外すことなんて、きっと出来ないと思うから。