キミに嘘を吐く日

それは、きっと私が勘違いしないように、あの日の嘘がホントなんだと知らしめるために。

彼はちゃんと言ってくれたんだって思ってる。

そんな宇野くんが私相手にヤキモチを妬くなんてあるわけない。ひどい侮辱だと思う。


「大切な子?」


川原くんって本当に訳が分からない人だ。


「宇野くんは、西条さんを大事にしてるもの」


そうだ。彼は彼女を大事にしている。大切な彼女を私達に紹介してくれてた。

それって、大事にしてるってことだもん。


「それ、宇野が言ったの?西条のことが大事だって」


そう言った川原くんの探るような眼差しが怖かった。


「言ったよ。昨日彼女を紹介するからって私に言ったの」

「ふぅん……」


まただ。川原くんって時々こんな風になにかを考えて、でも何を考えているかは読めなくて、
よく分からないところばかりで一緒にいると不安になる。


「まぁ、いいよ。それより、せっかくだから楽しまない?俺さ、お金払ったら元を取らないと気がすまない質なんだよね」

「そりゃあ、私だってせっかく来たんだし楽しみたいとは思ってるけど……」


一緒にいる相手次第だとも思うのよね。


「くしゅっ、」


急に鼻がむず痒くなってくしゃみが出始めた。

水族館の館内なら平気だったけど、ペンギン館は館と名前が付いていながら、そのほとんどは外にあって海のそばであっても、花粉は飛んでくるのだ。


「なに?寒い?」


さっきまで意地悪の連発だった川原くんが、心配してくれるのがなんだか意外だった。


「違う、これは……っ、くしゅっ、くしゅんっ」


やば、くしゃみ止まらなくなってきた。

ここって海も近いけど、同じくらい山も近い。花粉の量が多いんだろう。

早く室内に入らないと……。

くしゃみが出始めるのと同時に目まで痒くなってきた。