「あれ?市原も一緒に来るって言ってなかった?」


宇野くんの声に市川さんを見ると、彼女が困惑した様子で私を見ていた。


「市原さん、行って?」

「で、でも……」


今の状況で私が出ていくことがあまりよくないと、彼女も思っているようだった。

でもこのままじゃ、宇野くんに私も見つかってしまう。

隣にいる彼女と宇野くんの関係が分からない状態では会うことはできないよ。

市原さんの背中を強引に押して、私は彼らから少し距離をとった。

声が聞こえない所まで離れて、彼らの様子を見ていた。

久しぶりの再会に宇野くんもとても嬉しそうに見えた。

私だって、あの輪の中に入りたかった。

隣にいる彼女は一体誰なんだろう?

綺麗な人だった。

背の高い宇野くんの隣に立つ彼女は、宇野くんととても似合っていた。

まるで恋人同士みたい……。

不安的中?

でも、ただのクラスメートかもしれないし、友達かもしれない。

そう思いつつも、目の前で宇野くんの腕に抱きつく女の子の様子を見ていたら、分からなくなる。

とてつもなく不安になった。

市原さんがこちらを気にしているのが分かった。

でも今さらあの場に出ていくことはできなくて、スマホを取り出して彼女にRINEを送って私は彼らに背を向けて歩きだした。

『先にホテルに戻ってるね』

ここに私がいたら、きっと高田くんにも市原さんにも気を使わせるのが分かったし、久しぶりの再会に積もる話だってあるはずだ。

今は離れよう。そして、市原さんからまた話を聞けばいい。

そう思って、逃げるようにして離れた。