高田くんが宇野くんと待ち合わせをした道の駅はホテルから10分程歩いた場所にあった。

ここもゴールデンウィークのイベントで、店内や外に並ぶ露店に大勢の人で賑わっている。

あえて隠れなくても人混みが壁になってくれそうで、高田くんから少し離れた場所、建物の影から宇野くんがやって来るのを待っていた。


「宇野!」


高田くんの声が響き、彼が手を振る先を見る。


「誰だろう、隣にいる女」


私の代わりに隣にいた市原さんが、ボソッと呟いた。

私の目にも映っていた。高田くんに向かって歩いてくる宇野くんの隣には、彼より少し低いけれどスレンダーなショートカットの美少女が寄り添っていた。

高田くんが明らかに動揺した様子で、私達の方へ視線を向けるのが分かった。


「司、久しぶり」

「お、おう。久しぶり」


声がギリギリ聞こえるか聞こえないかといった距離で、周囲の雑音に消えてしまいそうな高田くんと……久しぶりに聞く宇野くんの声。

彼の声を聞いただけで、胸の奥から込み上げてくるものがある。でもそれをグッと堪えた。

目に映る宇野くんの姿は、あの日水族館で会った時よりも、少し痩せたように見えた。

もっと近くで彼の顔が見たかった。声を聞きたかった。

だけど、そうすることができないのは、隣にいる女の子のことが気になっているから。

本当なら、高田くんが宇野くんを私達のところに連れてきてくれる筈だった。

驚かそうと思って隠れていたけれど、今の状況では出ていくこともできない。