キミに嘘を吐く日

「宇野くん、お腹空かない?この水族館には水槽内で泳ぐイルカを見ながら食事が出来るレストランがあるよ」

「いいな、行こう」


レストランは1階にあって、2人で手を繋いだまま向かった。

レストランでは漁師さんのオススメパスタという名前のシーフードパスタを頼んだ。

水槽の中では2体のイルカが、優雅に泳いでいる。

ショーの時とは違ってのんびりと泳ぐイルカ達。穏やかな空間に時間を忘れて見入った。


「いろは、この後お土産見に行こう?」

「うん!」


うちに買って帰るお土産とは別に、宇野くんと2人で来た記念に何か買おう。

また、宇野くんとここに来たいけど、それを望むのはとても贅沢でワガママな気がするし。


「宇野くんは、お家にお土産買うの?」


何気に聞いた瞬間、宇野くんの表情に影が落ちた気がした。

それはほんの一瞬で、気のせいかと思うほどの僅かな時間だった。


「じーちゃんちに買って帰る」

「おじいさん?」

「俺のじーちゃんとばーちゃん饅頭とかより、洒落た洋菓子が好きでさ。ここのクッキーとかパイとか買って帰ったら喜ぶと思うんだ」


おじいちゃん、おばあちゃんこなのかな?

私は祖父母にまで買って帰ろうとはかんがえなかったよ。


「私も一緒に選んでもいい?」

「サンキュ。頼むよ」


きっと宇野くんに似た優しいおじいさん達なんだろうな。

せっかくだから喜んでもらいたいもの。

一生懸命選ぼう。