「いろは、イルカのショーが始まる。行こうぜ!」


手を引かれて、宇野くんの笑顔に答えるように私も笑顔で頷いた。

私は上手く笑えていたのかな?

イルカショーは満席で、水がかかる席が少し空いているだけだった。

2人で顔を見合って頷く。

少し詰めてもらって2人で前席でイルカのショーを見た。

イルカがジャンプするたびに水しぶきが散って、2人で「ワーワー」声を上げた。

多分こんな風に人前で声を上げることも、今までの私にはなかったこと。

宇野くんと仲良くなって、宇野くんの優しさに触れて、楽しくて、嬉しくて。

今まで感じることのなかった感情に自分でも知らなかった思いに気付けた。

今まで人と関わろうとしてこなかった自分が、ひどく勿体無いことをしていた気になる。

高校生になって、色々な人に出会って、もっと色んな感情や気持ちを知ることができていたのに、そんな貴重な時間を私は幾つも拾わずにいたのだと思う。

こんな感情は宇野くんと仲良くなれなかったら知ることができなかった。

宇野くん、ありがとう。

それから……好き、です。

やっと口にできた。この感情がなんなのか、ずっと頭の中、どこかで気づいていた。

だけど気付いていいのかも分からなかった。

だけど想うことは自由だ。

私は、宇野 色葉くんが好きです。

隣で濡れた前髪をかきあげる宇野くんの横顔を見ながら素直な気持ちが溢れてきた。