「この本を読みに来るコに会いたいんだって、この前本を読むところを邪魔してしまって、借りて帰ったわけでもなかったから、また読みにくるだろうと思ってキープしておきたかったんだって」


笑いを堪えながら話す彼女を前に、無性に恥ずかしくなった。

やっぱり宇野くんって変な人。

彼女にお礼を言って寝ている彼に近づいた。

寝息が聞こえるほどに寝入っている彼を起こすのも忍びない。

仕方なく彼の前の席に座って、ぼんやりと窓の外を見ていた。

今日は日差しが暖かくて、こうしていると気持ちいい。

宇野くんが寝てしまうのも分かる気がした。

眠たくはならないけど、目を瞑ってしまいたくなる。

だけどこんなところで目を瞑ってしまうのも恥ずかしい。

よくこんな誰に見られるか分からない場所で寝ていられるもんだな。

窓の方を向いて寝ている彼の寝顔をそっと盗み見てみた。

人の寝顔ってひどく無防備だ。

黙って見ていることは罪のようにも感じてしまう。

いつのまにか寝息が止んでいて、気付けば瞼が小さく震えて宇野くんが目を覚ました。


「……?」

「あ、えっと……」


黙って寝顔を見ていたことが悪いことのように思っていた私はなんて言ったらいいのか分からなくて口籠った。

ぼんやりとして視点の定まっていない、無防備な状態の彼の目が、ゆっくりと私を捉えるのが分かった。


「あー、夢かと思ったけど、消えないから夢じゃないのか」