もっと何か聞くことがあったはずだ。
何で死のうなんて思ったんですか?とか
何であの時笑ったんですか?とか
何で私はこんな事聞いたんだろう。
「1人なんですか?」
立ち入り禁止の屋上。
1人でお弁当食べるにはうってつけの場所。
佐野は私の顔を見て、それからゆっくり頷いいて、言った。
「君も、1人でしょ」
うん、1人だ。
でも、私の1人は慢性的なもので、当たり前の事。
佐野の1人は恐らく突発的なもので、ありえない事。
1人は1人でも、種類が違う。
あの日、佐野が死のうとした日、私と佐野は一緒に帰った。
意味はなかったと思う。ただ、あのまま佐野を放置して帰るなんて到底できなくて、私から声をかけた。
一緒に帰らないか、と。
佐野は黙って頷いた。
一言も喋らなかった。
傾いた太陽の橙色だけが、雄弁に何かを語っているような気がした。
そして、今屋上。
会話こそあったが、他には何も無い。
とりあえず、佐野から少し離れた位置に座る
佐野も、私から少し離れた場所に腰をおろす
佐野を横目で、それとなく観察する。
顔は整っている方だと思う。
思うというのも私の意見ではなくて、クラスの女子生徒が言っていた情報からすると、イケメンという部類に入っているだろうという客観的な推察である。
あまり喋らない。
かと言って友人や恋人がいなかった訳では無く、確か友人は沢山いたし、恋人は1学年上の先輩だった気がする。
少なくとも、私の知る限り彼は自殺からは程遠い人だった。
なのに、どうして。
紛れもなく、彼はあの日死のうとしていた。
絶望したような瞳で。
どうして。
視線に気づいたのか、佐野は私に目線を向ける。
「本橋さん・・・だったよね。名前」
「はい」
それだけ確認すると、佐野は視線を外し、手元の弁当に手をつけた。
綺麗な食べ方だな、と思った。
箸を優しく持って一口一口を丁寧に口に運ぶ
もしかしたら、佐野の家はそういう事に厳しい家庭なのかもしれない。
そんな風に思える食べ方だった。
人の食事をジロジロ観察なんかしてたから、買いたての冷たかったジュースはいつの間にか温くなっていた。
「・・・あの」
佐野が困ったように、言葉を告げる。
「何か用?」
確かに別段親しくもない陰気な自殺現場にいわせただけの女子生徒にジロジロ見られていたら、疑問をいだくだろう。
なにか都合の良い言い訳を考えないと、食べ方が綺麗だと思ったなんてさすがに酷すぎる
何とか頭を捻って考えた言い訳を口にしようと、意を決して佐野をみつめる。
「食べ方がとても綺麗だったので、つい、みとれてました」
違う、こっちじゃないこれはただの本音だ。
また、間違えた。
思っている事を簡単に口にしてしまう私の悪癖は通常運転に働いている。
「・・・」
佐野もこれにはドン引きだったらしく、何も言わず、ただ視線をあらぬ方向に飛ばした。
「・・・すみません」
「いや、別に気にしないで」
佐野が何か口の中でもにょもにと続ける。
「何かいいましたか?」
しまった。聞いてしまった。
他人の言葉には、あまり反応しないようにしてきたのに。
何で、聞いてしまったのだろう。
佐野は私を見ると、気まずそうに言った。
「嬉しかったから・・・気にしないで・・・」
「え、」
嬉しかったのか、佐野は。
食べ方が綺麗と言われて。
気持ち悪がられているとばっかり思っていだから、驚きで言葉が出てこない。
そういえば、驚くなんて久しぶりだ。
何故か、懐かしい。
自分は人間観察は得意だと思っていたが、改めなくてはならないかもしれない。
だって、佐野の思いが想像もつかなかった。
嬉しいだなんて思っていたなんて。
どちらともなく沈黙が落ちる。
昼休み終了のチャイムがなるまで、2人とも
そのままだった。
何で死のうなんて思ったんですか?とか
何であの時笑ったんですか?とか
何で私はこんな事聞いたんだろう。
「1人なんですか?」
立ち入り禁止の屋上。
1人でお弁当食べるにはうってつけの場所。
佐野は私の顔を見て、それからゆっくり頷いいて、言った。
「君も、1人でしょ」
うん、1人だ。
でも、私の1人は慢性的なもので、当たり前の事。
佐野の1人は恐らく突発的なもので、ありえない事。
1人は1人でも、種類が違う。
あの日、佐野が死のうとした日、私と佐野は一緒に帰った。
意味はなかったと思う。ただ、あのまま佐野を放置して帰るなんて到底できなくて、私から声をかけた。
一緒に帰らないか、と。
佐野は黙って頷いた。
一言も喋らなかった。
傾いた太陽の橙色だけが、雄弁に何かを語っているような気がした。
そして、今屋上。
会話こそあったが、他には何も無い。
とりあえず、佐野から少し離れた位置に座る
佐野も、私から少し離れた場所に腰をおろす
佐野を横目で、それとなく観察する。
顔は整っている方だと思う。
思うというのも私の意見ではなくて、クラスの女子生徒が言っていた情報からすると、イケメンという部類に入っているだろうという客観的な推察である。
あまり喋らない。
かと言って友人や恋人がいなかった訳では無く、確か友人は沢山いたし、恋人は1学年上の先輩だった気がする。
少なくとも、私の知る限り彼は自殺からは程遠い人だった。
なのに、どうして。
紛れもなく、彼はあの日死のうとしていた。
絶望したような瞳で。
どうして。
視線に気づいたのか、佐野は私に目線を向ける。
「本橋さん・・・だったよね。名前」
「はい」
それだけ確認すると、佐野は視線を外し、手元の弁当に手をつけた。
綺麗な食べ方だな、と思った。
箸を優しく持って一口一口を丁寧に口に運ぶ
もしかしたら、佐野の家はそういう事に厳しい家庭なのかもしれない。
そんな風に思える食べ方だった。
人の食事をジロジロ観察なんかしてたから、買いたての冷たかったジュースはいつの間にか温くなっていた。
「・・・あの」
佐野が困ったように、言葉を告げる。
「何か用?」
確かに別段親しくもない陰気な自殺現場にいわせただけの女子生徒にジロジロ見られていたら、疑問をいだくだろう。
なにか都合の良い言い訳を考えないと、食べ方が綺麗だと思ったなんてさすがに酷すぎる
何とか頭を捻って考えた言い訳を口にしようと、意を決して佐野をみつめる。
「食べ方がとても綺麗だったので、つい、みとれてました」
違う、こっちじゃないこれはただの本音だ。
また、間違えた。
思っている事を簡単に口にしてしまう私の悪癖は通常運転に働いている。
「・・・」
佐野もこれにはドン引きだったらしく、何も言わず、ただ視線をあらぬ方向に飛ばした。
「・・・すみません」
「いや、別に気にしないで」
佐野が何か口の中でもにょもにと続ける。
「何かいいましたか?」
しまった。聞いてしまった。
他人の言葉には、あまり反応しないようにしてきたのに。
何で、聞いてしまったのだろう。
佐野は私を見ると、気まずそうに言った。
「嬉しかったから・・・気にしないで・・・」
「え、」
嬉しかったのか、佐野は。
食べ方が綺麗と言われて。
気持ち悪がられているとばっかり思っていだから、驚きで言葉が出てこない。
そういえば、驚くなんて久しぶりだ。
何故か、懐かしい。
自分は人間観察は得意だと思っていたが、改めなくてはならないかもしれない。
だって、佐野の思いが想像もつかなかった。
嬉しいだなんて思っていたなんて。
どちらともなく沈黙が落ちる。
昼休み終了のチャイムがなるまで、2人とも
そのままだった。
