ー5月ー


「修学旅行楽しみだわ〜。」


「班ってどうやって決めんのかな?」


「どんなとこ見に行くんだろーな。」


クラスメイトの中で飛び交う話題は修学旅行でもちきりだった。

ガタン。とドアの開く音がして、先生が教室に入ってくる。
先生が黒板に『修学旅行の班決め』と書き出した途端、教室中が一気に湧く。


中学3年間の締めくくりの旅行とあって、班のメンバーは1番と言っても過言でないほど重要だった。


「女子は女子、男子は男子でグループを組んではください。女子と男子の組み合わせはくじで決めます。」


一斉に立ち上がり女子と男子それぞれで、会議を開いた。
当然私は愛と組んだが、他の人も組みたい相手は決まっているようで、すぐにくじ引きへと移った。

「男子誰になるかな!」


愛がはしゃいで言う。よほど楽しみなのかいつも以上に浮き足立っている。


「変な人じゃないといいけどね。」


一方私は、まだ最上級生という自覚が持てずにいた。
だからこの時間も正直うわの空だった。


だってあと一年で卒業だなんて信じられない。
ついこの間、入学したばかりのような気がする。


だから毎日が楽しみな代わりに、1日1日が過ぎる度に『最後』という言葉がよぎるようになっていた。